気温制御国際国連(TCUN)は初代事務総長にアルメリア系ユダヤ人シモン・ケヴォーキアン氏(79)を選出したと発表した。ケヴォーキアン氏はほとんど世界に知られていなかった、気象学の影の権威。気温制御装置開発者の太田慈郎教授にとってはアメリカ留学時代の恩師でもある。太田教授は広報局長(事務次長)に選出された。
iECアクティベーター使用について管理、許可する組織だが、それ以上の国際組織を目指していることが事務総長就任会見で明らかになった。当面のスローガンは「気温が世界をつなぐ」となっている。
就任会見直前、寒さに苦しむある北の国の路上住民に向けて温かい空気が無償で2日間ほど流され、人々はほっと一息つくことができたという。これは薄着で寒さに耐える路上住民にいたく同情した事務総長からのプレゼントだという。「いつかこの国の独裁者の心も気温制御で溶かしてしまいたい。きっとミサイルがどんなに馬鹿馬鹿しいことか分かってくれると思う…」と事務総長はしんみりと語った。
会見では職員募集の説明に時間を割いた。「もちろん、インターネットでも募集要項は公開していますが、ネット環境がない人もいるので、ここで説明することにした。組織はまず人ありきと考えている」とのことである。
事務局では研究員のほか事務員の募集も3月から開始する。既に所属先のある研究員の場合、いったん退職することが求められる。事務員には気象予報士あるいは同等の知識があることが求められ、さらに35歳以上という「逆年齢制限」も設けられる。これらの条件についてケヴォーキアン事務総長は「軍事力に匹敵する気温制御を行う組織なので、人生経験はもちろんのこと、人としてのバランスの良さ、誠実さ、真摯な態度を重視したい。特定の組織に利益を与えるような要素を持っている人は困るので、採用が決まったら現所属先は必ず退職してもらうことにした。自国の利益を優先する可能性があるので政治に関わった経歴のある方は面倒くさいので断固お断りする。一方、障碍者採用も積極的に行い、一般企業が見落としているハンディーキャップパーソン独特の粘り強さ、独特の視点などを有効に活用する。我々の用意した場所なら必ず活躍してもらえると信じている。このように、未だかつてない国際組織を作り上げる決意である」と長い白髭を震わせながら語った。
国籍、性別、人種は一切問わない。「コミュニケーションが取れるなら動物でもよい。動物のほうが気象をよく知っていることもあるから。むろん、地球外生物にも期待している」とケヴォーキアン事務総長は顔をほころばせた。
教え子である太田教授も「やっとケヴォーキアン先生が日の目を見ることができ、一緒にこのような仕事ができることをうれしく思っています。今回我々は、国際連盟はなぜ失敗したのか徹底的に研究した。さらに国際連合の問題点も洗い出し、それらを凌駕する組織構成を目指すことになった。必ず実現できると信じています。そのうちTCUNで世界の抱える問題を解決できるようになりたいと思っている。そのために我々は気象だけでなくありとあらゆることを学ぶ姿勢である。軍事で圧倒する時代が早く過去になるよう、努力していく。もはや人類の取るべき道は牽制や対立ではなく、思いやりのある共存であることを知らしめたい」と鼻息を荒くした。
設立資金は世界中から集まった募金で賄われている。「幼い子供の1ドルから、富豪の2000億ドルまで貴重な財源を頂き、身の引き締まる思い。あとはユダヤ人である私の商才も生かして稼ぎますよ。そうそう、事務局の場所は極秘ですが、世界各国に作る予定です。もし私に連絡したいことがあったら、ラップランドのサンタクロース村宛てに手紙を出してください。私はサンタクロースと親友なので、必ず転送されてきます。私は電子メールなんか見ないのでね。え?私がサンタクロースかって?クリスマスに雪が降ったら、そういことなんでしょうなあ、はっはっはっ」
事務総長がこう語った直後、会見場は白い煙に包まれ、視界が開けた時には事務総長以下TCUNの人々の姿は消えていた。記者が急ぎ太田教授の自宅に向かったところ「夫ですか?今日は遠くで飲み会だから帰ってこないと言っていました。どこの飲み屋かご存じないですか?」と妻の節子さんが心配そうにしていた。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
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