葬式の場で、故人の軌跡を新聞記事になぞらえて「号外」として配布することが密かなブームだ。終活の一環として、故人が生前から号外を準備する。辞世の句や戒名まで印字されているのもある。葬式をしめやかな場だけでなく弔問客へのおもてなしにもしたいからだろう。ところで最近は意外にも、この「葬式号外」がコンサルティングに活用される例が出てきた。
その背景として、「葬式号外」を生前に作成する過程が、本人にとって期せずして「自分を知る」機会になったという意見が多いことがある。やり残したことが明らかになり、未来ビジョンを見出すことができるわけだ。例えば、80歳になって「葬式号外」を作成しだした男性が、「大学生の頃は山岳部で活躍!」などの記事を書いているうちに、「まだ登ってない山がある」と気づいて再び登山活動にいそしむなどだ。
このような意識や活動の変容に、コンサルティング会社が注目しだした。マッカーシー&カンパニー社の水野一郎氏(48歳)は言う、「中小企業相手のコンサルの場合、まずは社長に葬式号外を書いてもらいます」。創業者社長なら当然、自分の人生イコール自社なので、それに関する記事が多くなる。葬式が20年後に予定されているとなると、今後20年間に会社がどのように発展するかが描かれるという。
水野氏はさらに言う。「こうして作成した葬式号外を、社内に掲示するのです。」これには一瞬、ぎょっとする。社内で毎日、社長の訃報を見ている感覚になるからだ。
でも、そうすることで、第一に、社長のビジョンを社内に共有することができ、社員のモチベーションアップにつながる。目の前の単純作業に従事している若手社員でも、その作業が将来の具体的な社会貢献につながるとわかれば、やる気も出るものだ。第二に、そのビジョンを実現する方策に関して、社員からいろいろな具体案が上がってくるようになり、具現化への道が拓ける。第三に、他社からの訪問者がその号外を見て、コラボレーションを提案したりするようになる。
「葬式号外の社内掲示は一石三鳥になるのです」と水野氏は胸を張る。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
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