政府与党が発表した「短期年金」が議論を呼んでいる。受給者に「死に損」をイメージさせる点から、自殺予防になるとのことだ。確かに、こうした長生きご褒美のような年金があると、自殺を予防する点で一助にはなるであろう。喫煙者に、若くして肺癌などの喫煙関連の癌にかからないために禁煙しようというモチベーションを高める効果もある。また、年金制度をより若くから認識してもらえるメリットも聞こえがいい。だが、隠された別の意図があることをより議論すべきだろう。
ズバリ言うなら、これは年金ネズミ講が破綻しかけたことを、新たな販路拡大で取り繕っているにすぎない。やや古いデータだが、旧厚生省「年金白書」(1999年)によれば、当時70才の夫婦では、1300万円の保険料負担で、6800万円の年金を受け取っていた。給付額は負担の5倍以上になる。ところが、その孫の世代の10才の子は将来、7500万円の保険料負担で、4900万円しか受け取れないという試算が当時から出ている。このように、加入者が自分で積み立てた分の保険料だけでは給付をまかない切れない状態が現実になり、下の世代の保険料負担で年金給付をまかなう賦課方式の要素が、なし崩し的に強まった。少子高齢化に伴った、こうした賦課方式の要素が、年金をネズミ講のようなシステムに仕上げたと、批判が強まってきている。
ネズミ講という、言わば犯罪が成立する条件として、
① 新規会員からの金銭の配当、ピラミッド型組織が成立している。
②「商品らしき」もの、「商品価値」がないものを扱っている。
という2点がある。①は上述で説明した通り、②は、債務超過状態にある現在の年金制度では、「年金受給権」には、財源が現実に存在しないことから明らかだ。このように、年金がネズミ講と類似のもので、でいずれ破綻するということは、数年前から言われてきている。
今回の短期年金とは、ネズミ講を維持するための苦肉の策とも言える。すなわち、短期年金で納入された積立金は、そのまま納入者に将来、入るわけではなく、現在ないしは近い将来の高齢者が年金として受給する。そして、十数年後には「超短期年金」などという新たな年金が設定されて、その納入金が、現在の短期年金の受給者に支払われる。こうした自転車操業が続いて、いつか破綻するのではないか。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
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