今から100年前に50億歳の宇宙人から月誕生の思い出を聞いた未来新聞はこのほど、我々の宇宙とは異なる宇宙、つまり別の「マルチバース」に暮らす知的生命体との交信に成功した。この知的生命体の平均寿命は200億歳で、交信に成功した相手は160億歳だが、それでも人間に換算すると65歳ほどに過ぎないという。この宇宙人は彼の住む宇宙から138億年前、つまり22億歳(人間で例えると9歳前後)の時に我々の宇宙の誕生を目撃しているという。詳しく話を聞いた。
未来新聞記者(以下「記」):宇宙誕生を目撃したとはどういう意味ですか。
知的生命体(以下「知」):私の父は、今230億歳(地球人で例えると90代前半)なのですが、その父は私が子供のころ、世界政府立天文台のマルチバース研究所で働いていたんです。私たちの住む宇宙とは別の宇宙について研究する場所なんですが、私がまだ赤ちゃん(といっても2億歳)の時に別のマルチバースの撮影に初めて成功したと聞きました。私が22億歳になって、あなたの宇宙の誕生を目撃した日は、マルチバース研究所の特別公開日でした。誰でも無料で研究所を見学できたんですが、私は真っ先に父のところに向かったんです。父の机の上には「超次元撮影機」というものがあり、それで他のマルチバースを撮影していたと聞きました。撮影機を覗いても良いかと聞いたら、快諾してくれました。この機械の映像は常時録画されていたんですが、機械を覗いた途端に画面が真っ白になって、故障かと思って父に尋ねたらいや、宇宙誕生の瞬間だろうとの答えでした。機械を動かしてみると別のマルチバースが映せたので、確かに故障ではないと分かりました。機械をこの宇宙に戻してみると、父が「すごいな、宇宙誕生の瞬間を目撃できたなんて!」と言うので、周りから次々に人が駆け寄ってきて、我先にと機械を覗こうとしたんです。画面を拡大してみると、ちょうどヘリウム原子核ができつつあるところのようでした。
記:それは貴重な経験でしたね!その後、私たちの宇宙を追跡などされたのですか。
知:マルチバース研究所では、確認した全ての宇宙に番号を振っていますので、全ての宇宙を追跡することができます。番号は私たちの文明の文字、数字で付けるのですが、あなた方の文字、数字に例えると「21880321BS」のような感じで、発見日と発見方向の組み合わせで付けています。もちろんあなた方の宇宙にも番号が振られ、その後追跡されています。
記:宇宙の晴れ上がりも見ていたのですか。
知:私自身は見ていませんが、観測はされていたようです。宇宙が晴れ上がると、撮影機の画面が急に暗くなり、時折光子が通過して直線が見えるだけになるそうです。その後最初の恒星が誕生する様子も見ています。あなた方の宇宙は、少し宇宙の晴れ上がりまでの時間も最初の恒星が誕生するまでの時間も遅かったです。8割くらいの宇宙は誕生してから10万年以内に晴れ上がって、1億年以内に最初の恒星が誕生します。
記:なるほど。私たちの文明が宇宙で何番目の知的生命だったかとか分かりますか。
知:それについてはこちらでは把握していますが、当事者に伝えることは禁止されていますのでお伝えすることはできません。申し訳ありません。ただ、最初の知的生命は宇宙が誕生してから20億年以内に誕生していて、それは早い方だと思います。
記:文明の平均存続期間はどれくらいですか。
知:それについてもお伝えすることはできないのですが、10億年以上続いている文明はたくさんあります。あなた方の文明はまだ数百万年ですので、まだまだ大丈夫だと思いますよ。
記:それは安心しました。私たちの宇宙はあなたにとって思い入れのあるものだと思います。最後に、そんな宇宙の知的生命と話をすることができた感想をお聞かせください。
知:それは素直に嬉しいです。撮影機で知的生命の存在については知ることができますが、交信することはなかなか難しいですからね。あなたたちは他の知的生命に比べて、気が短くて争いごとを起こしやすい面はありますが、非常に前向きで、社会を良くしていこう、便利なものにしようという希望にあふれていると思います。その向上心を持ち続けてください。そうすれば、必ず良い結果に繋がると思います。
記:本日はどうもありがとうございました。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
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