涼しい秋風が吹いてきたと思ったら、もう冬の足音が聞こえ始めた。
最近は秋が短い気がする。
11月初旬のある日、記者は再び夫と家族シミュレーターを訪れた。
シミュレーションがさらに進化したと夫から聞いたのは、ついこの前のことだった。
夫は旅が好きで、普段の休日にも箱根や富士五湖によく出かける。
そして仕事帰りには時々、家族シミュレーターに寄って旅を楽しんでいる。
今回私たちは、結婚後初めての旅行で行った京都に、3D画像で当時の姿になって行ってみることにした。
シミュレーションの良いところは、同じ日にいろいろな季節の素晴らしい情景を楽しめること。
私たちは、シミュレーターおすすめのコースをまわった。
まず平安神宮の美しいお庭を歩いた。 春の桜の咲き乱れる頃だった。
山の桜やお花見の公園の桜も素晴らしいが、池泉回遊式庭園である平安神宮神苑の桜は絵のように美しい。
ほかには誰もいない、しんとした静けさの中をゆったりと歩いてまわった。
次の場面は、夏の鴨川沿いだった。日中はとても暑い日だったが、夕方になって川辺に腰を降ろしてみると涼しさを感じた。
ふたりはここで長い間、話していた。
さらに、場面は冬になった。
冬の渡月橋を渡って行くと、
雪が散らついてきた。
寒さが身にしみると時間が止まったようになり、より風情が感じられるのが不思議だ。
京都は暑くても寒くても心に深く残る場所らしい。
秋の場面は、記者が高校の修学旅行のときに見た、生涯で最も美しいと思った光景を再現することになった。
それはこれまでも夫には話していた光景だったが、言葉では言い尽くせないものがあったのだった。
〜その年の紅葉は、とりわけ美しかった。
高山寺に着いたのは、ちょうど日が沈む前の時間帯で、やわらかな光が紅葉を照らしていた。
そこに、霧雨が降ってきた。
お天気雨である。
霧雨の中、おだやかな光に色とりどりの紅葉が照らし出されている。
あまりに幻想的なその光景に、これは本当に現実なのだろうかと思った。
記者がその情景を文章にしてシミュレーターに話しかけていくと、絵を描くようにシミュレーション映像が出来上がっていった。
「その右側はもっと緑、上は鮮やかな赤、そこはオレンジと黄色が混じっていて…」と話し続けていると、
突然、画面の右下に60色の色と色鉛筆、筆、消しゴム、スプレーが出てきた。
色をつけられるようになったんだ、と分かった。
やはり、話しかけるより直接色を塗るほうがやり易い。
思い浮かぶままに微妙な色を塗っていった。
その後、夫と私は再現された映像の中をゆっくりと進んだ。
この世のものとは思えない美しさ…
一緒に来られて良かった。
夫もまたその光景を忘れられなくなったという。
シミュレーションはどこまで進化するのだろう、4Kテレビのような鮮明な映像で思い出を共有できたら、次には何がおこるのだろう。
今度は子ども達と来よう。
娘達も、ここでそれぞれ思い思いの色を塗るだろう。
そうしてできた映像の中を、次は家族そろって歩いてみたい。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。
映画「君の名は」を観に行って紅葉の中を歩くシーンを見たとき、文中の「最も美しい光景」が思い浮かびました。実際に高校生のときに見た光景です。
写真の日本庭園の紅葉は、
最近一番きれいだと思ったものです。やはり夕暮れ前の光に照らされていました。
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