花粉症の季節が近づいてきた。花粉症は今世紀、どんどん増え続け、我が国の大都市では今や有病率が30%を越え、3人に1人が苛まれている国民病となった。ところが、今年の東京では、花粉症患者が激減することが予想される。そのカギとなるのが、花粉吸着剤を路面に撒布する計画だ。
そもそも、花粉症は、スギをはじめとする植物の花粉を鼻から吸収することで生じる。だからこの季節、あちこちでスギを恨む声が聞こえてくる。「スギなど全部、伐採してしまえばいいのに」と。
ところが、スギがたくさん生えている山間部では花粉症患者は意外に少ない。なぜなら、山村ではスギから大量の花粉が放たれるが、その大半が土の上に落ち、そこで土壌に吸着されて二度と舞わないからだ。一方で、都会の道路はアスファルトで舗装されているため、飛んできた花粉が地表に落ちても風が吹けば舞い上がる。そのため花粉の総量自体は少なくても、いつまでも残って人に接触し続けるのだ。
そこで、「では、アスファルトに花粉を吸着する吸着材を撒けばいいのでは?」という意見から、東京都では数年前から実験が始まった。様々な花粉吸着材がテストされ、結果、去年の春、世田谷区で実施された吸着材の効果が高く、同区では花粉症患者が激減したことが報告された。そのため、今年から、東京23区全体で路面に吸着材を撒布することになった。
撒布には多数の作業車が必要になり、その経費は馬鹿にならないが、計算上は花粉症の患者の医療費に比べれば安くなるのだそうだ。今のところ、吸着材の効果は数か月程度であるため、毎年、撒布しないといけなくなるようだが、いずれは効果がもっと長い吸着材も開発されることが期待される。
さて、これにより、東京全体で花粉症患者が減るだろうか。都の担当者は胸を張る。「東京で実験して、それをいずれ世界に輸出していきたい」と。確かに、花粉症はここ数十年、世界中で増加している。その理由として、環境が衛生的になり、免疫形成期の幼少時に病原体に接しなくなり(鼻たれ小僧が減り)、気道の免疫系のバランスが崩れて本来は免疫反応を起こさない花粉のようなものに反応してしまう体質の人が増えたという衛生仮説がよく用いられる。東京から始まる花粉症対策が世界を変えることになるだろうか?
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
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