外国人に「日本版サンタに会うツアー」が人気だ。昨年3Dアニメーション大作「7人の笠地蔵」が全世界で公開されて以来、地蔵を探し回る外国人が多数来日していることを受けNIS社が発売したツアー商品。初年度の今年は12月限定で売り出している。
雪深い地方に住む貧しい老夫婦は年の瀬が迫っているのに餅すら買うことができない。おじいさんは笠を作って売りに出かけるがひとつも売れず、帰路に見かけた7体の地蔵に売れなかった笠をかぶせてやり、足りなかった1体には自分の手拭いをかけてやる。おじいさんからその話を聞いたおばあさんは「よいことをした」と喜ぶ。そしてその夜、家の外で物音がしたのでのぞいてみると、家の前に米や野菜などの食料や小判が積まれていた。そしてちょうど笠をかぶった6体の地蔵と手拭いをかぶった1体の地蔵が去っていくところであった…という日本に伝わる昔話が「笠地蔵」である。
この昔話を3Dアニメーションで知った外国人が「日本にもサンタがいた」と驚き、来日しては地蔵を探し回るということが増えて来た。しかしたいていの地蔵は1体でこじんまりと安置されており、お話のように7体そろって並んでいるところは現代では少なくなっている。
7体並んでいる地蔵がある東京都中野区の全定院では、この秋から外国人が次々と訪れ観光地の土産物屋で調達したと思われる笠をかぶせていく事態に困惑していた。住職の高梁さんは「笠の上に笠を重ねたりして美観を損ねますし、1体は体中を手拭いで包まれてまるで縛られ地蔵になってしまいました。怒るわけにはいきませんし、困っていたんです。11月にNIS社の方が来て、アニメのことを知りました。そこでNIS社にご協力いただいて、笠をのせたあとそっと撤去してもらい、日に何度か笠をかぶせるツアーをやっています。希望があれば英語で仏教の話をすることもあります」と語る。
ツアーは完全プライベートで1組1ツアー。全国各地の6体以上の地蔵がある寺院まで案内する。どこへ案内されるかはその日のツアーの申し込み状況により変わるため、熱心なファンの間では「地蔵ミステリーツアー」とも呼ばれリピーターを呼び込んでいる。特に物語のような豪雪地帯に案内すると「当たり」だととても喜ばれるという。
笠は手作りを推奨しており、1日目は笠を作成し、2日目に地蔵にかぶせにいくというのが定番のコース。気持ちが伝われば3日目の朝、米がホテルの部屋に届くという仕組み。
参加したアメリカ人のNさんにメールで取材したところ「アニメでは7体並んだオジゾウサマの立体感に魅せられました。笠をかぶったときの顔の陰影にはもう夢中になりました。7体にちなみ、7回観ましたが毎回新しい感動があり、このツアーにぜひ参加したいと思っていました。もし3日間居られたらホテルに米が届いたかもしれないが、仕事の都合で2日しか日本に居られなかったのが残念だった。でも帰国後地蔵さまから梵字で書かれたサンキューカードが届いたのでとてもうれしかった。今度はゆっくり来て何か所も笠をかぶせに行きたい」とのことだった。
高梁住職は「日本では六地蔵が一般的です。これは六道輪廻の思想に基づいていて、六道を表現しているのです。ですので笠地蔵の7体というのは実はちょっと珍しい。当院では先代がラッキーセブンということで1対増やしたのですが参拝者がこんな形で増えるとは、先代の先見の明に改めて感じ入る日々です」と合掌した。
NIS社企画部長は「参拝料のかからない寺院を選んだり、集合場所からさほど遠くない地蔵を選べばコストも抑えられる。交通手段が整っていなくてもおじいさんが延々と歩いたシーンがアニメにあるので、お客様も喜んで歩いてくれます。このアニメのスポンサーになっておいて本当によかったです」と鼻高々だった。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。
これは!と思うような冴えた記事だと思います。笠地蔵のことを小さい時に本で読んだことを思い出し、心温まります。多くの人の目に触れさせたい記事ですね(^^)/ ✿✿✿✿✿✿✿✿✿
この記事、面白かったです!
お二方ともありがとうございます。
私の中の面白さメーターではこの記事は「ごく普通」だったのでこんなに喜んでもらえてうれしいです!
コメントの書き込みにはログインが必要です。