ビジネス教養教室:将棋や碁はなぜビジネスに役立つのか?(東京東海大学教授・神頼刷蔵)

 人材市場において、将棋や碁などのいわゆる戦略系ゲームが得意な人が引っ張りだこになっている。これについては、日本のビジネス環境が現在非常に早いスピードで変動していることが背景に挙げられる。世界情勢の複雑化・不安定化に加えて、ICT技術の飛躍的発展による商品、サービスの異常なスピードでの発展により、先読みをして大量の選択枝を把握した上で現在の最善手を打つことができる、戦略的能力が強く求められるようになったのだ。

 このような能力を鍛えるのに最も適切だと思われたのが、将棋、碁、あるいはオセロなどのゲームである。しかし、このような戦略系のゲームは頭を使うし、粘り強さが必要なため、より感覚的本能的で頭をあまり使わなくても良い、反射系の能力を多用するコンピューターゲームなどに押され、最近ではこれらの戦略系のゲームが得意な人材が減ってきていた。コンピューターゲームでも戦略系のゲームは多数あるが、総体から見ればユーザーは少ない。

 そのような状況下で、これらの人材に対するニーズが格段に増えたのであるから、需要が逼迫するのは当然のことである。

 また、将棋、碁、チェスなどでは既にAI(人工知能)の方が人間を上回っているが、将棋や碁などと違い、現実の世界は変数が比べ物にならないくらい多いため、現実の世界での戦略的能力がAIに取って代わられてしまうのは相当先のことであると予想される。よって、将棋や碁などで鍛えた能力が必要とされる期間はまだ相当長いだろう。

 今後は子供達に、かつてのように小さい頃から将棋などを教える必要があるが、現在の親の世代は既にあまりやらなくなっているため、祖父母の世代にお願いするのが最も良いのではないかと思う。

 ちなみに、「待った」が現実の世界では通用しないことも必ず教えるべきだと筆者は考える。(東京東海大学教授・戦略思考学専攻・神頼刷蔵)

投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)

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