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インスリン作動性植物で温暖化・砂漠化防止に

 米国カリフォルニアのベンチャー企業、バイオプラント社は、これまで動物のみに作用すると考えられていたインスリンを植物で作用させることに成功したと発表した。同技術の特許も申請中という。同技術で作製した植物(写真はサボテン)は、従来の植物のおよそ倍の速さで大きくなるという。砂漠化・温暖化防止への扉が開かれるのかと注目をあびている。

 我々動物は、食事中のブドウ糖などから炭水化物・脂肪・蛋白質などの体の成分を作る。これを同化という。同化をつかさどるホルモンは、一部成長ホルモンの筋肉への作用などを除けば、ほぼインスリンに限られる。また、血中のインスリンに対して、筋肉や脂肪などの細胞がGLUT4と呼ばれるレセプターで反応することで、筋肉や脂肪にブドウ糖がとりこまれることが近年、わかってきた。バイオプラント社は、植物のDNAに、ベクターと呼ばれる運び屋ウイルスを用いて、インスリンとGLUT4を組み込むことに成功した。すると、植物の増殖スピードが倍増したとのことだ。

 これまで、植物のホルモンに関しては、オーキシンやジベレリンなど、さまざまなものが研究されてきた。これらは合成・作用場所が不明瞭であったり、必ずしも動物のホルモンと同じ性質ではないなど、不明な点が多かった。が、多くの植物は葉緑体を用いた光合成でブドウ糖を合成し、それによって成長することは明らかだった。今回の発表で植物の同化能力がインスリンによって倍増したことからは、おそらくはこれまでの植物は、光合成で得たブドウ糖を必ずしも効率よく同化に用いていなかったのではないかと推察される。なお、今回の発表でも、植物のどの部位でインスリンが作られているかは不明という。

 東京大学内分泌内科の原和男教授の話「インスリンとその作用機序は、糖尿病にからんで近年激しく研究されている。我々を含めて日本が世界をリードしている分野のひとつでもある。まさかそれが植物に導入できるとは思ってもみなかった。トランスレーショナルリサーチ(分野の垣根を越えた研究)が大事だと言われてきたが、日本はまだまだ閉鎖的だと感じる。我々が農学部と共同研究して発表すべきだった。反省したい。」

投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)

※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。

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