「実は、僕自身、成人してから初めての選挙も、2回目の選挙も、行かなかったんです」―こう話すのは、NPO法人「地育塾」代表で東横教育大学大学院1年の高橋創(つくる)さんだ。1回目は、実家から住民票を移していなかったため、投票が「正直、面倒くさいなと思った」ためだ。2回目は、「選挙のはがきが届いて、今度はちゃんと投票しなきゃと思った。でも、ニュースを見ていても投票先を決められなくて、どうしたらいいかわからなくなってしまった」。
大手ポータルサイトでの、投票先を決めるシステムも利用してみた。設問に対して答えるだけで、自分の考えに近いマニフェストを掲げている政党を選んでくれるシステムだ。しかし、「ある論点については賛成でも、別の論点では違和感を感じたりして、これだけで決めるのは難しいと思った」。特に、2012年末に行われた衆議院議員選挙では、原発・エネルギー政策、尖閣諸島やTPPの問題、消費税増税など、大きな論点が多く最後まで迷ったという。結局、選挙をわかりやすく解説しているテレビ番組を見たり、各政党のホームページやマニフェストを見たり、街頭演説を聴きに行ったりして投票先を決め、なんとか選挙に参加することができたが、「本当にそれで良かったのか、自信がもてなかった。普段から考えておかなきゃダメだと反省した」。政治や投票について、自分ごととして考えることができていなかったことを痛感することになった。
翌年から高橋さんは、「自分のメモとして」各政党のマニフェストや党首討論の動画を自身のブログでまとめ始めた。すると、アクセス数が急増。フェイスブックなどで、直接の友人ではない人からもコメントをもらうようになり、自分と同じように迷っている人が多いことを実感した。
「『選挙に行ったほうがいいのはわかっているけれど、じゃあ誰に投票したらいいかというと分からない』、というのが、若者が投票から遠ざかっている大きな要因だと思う。義務教育で選挙について教わってから選挙権を得るまで、5年程のブランクがある。その間どれだけ選挙や政治について知ることができるかは、その人自身の関心や、高校、大学、家庭などの環境に因ってしまうし、成人しても、選挙への参加方法を教わる機会はない。結局、分からないからと投票が面倒になってしまったり、なんとなくのニュースの印象で投票先を決めたりしてしまう人が多い。この現状を、自分たちから変えて行かなければと思った」。
そして高橋さんは昨年10月、大学の友人らと共に「地育塾」を立ち上げ、地域の塾や高校へ出張授業をはじめた。期日前投票の方法など具体的なことを伝えるだけでなく、「自分と社会の未来を考えてもらう」ワークショップだ。まず、自分の将来や自分の街の未来がどうなったら良いかを考えてもらい、次に、最近の選挙で争点となっている問題について「自分なりの優先順位」を考える。そして、関心のある問題ごとにグループに分かれ、ディスカッションを行うというものだ。
「地育塾」では今月から、Webサイト上でこのワークショップの内容とレジュメを公開し、自由に利用できるようにした。「大学生向けのワークショップも行っていきたいし、各自治体と連携して成人式の前などにこのワークショップをできたら嬉しい。他のNPOの方にもどんどん参加してもらいたい」。高橋さんらの挑戦は続いていく。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。
非常に地道な活動についての具体性のある記事で、企画書にもなっていると思います。今回の選挙を通じて若い人の政治への関心はかなり高まってきたので、こういう動きはあちらこちらで活性化するのでしょうね。
オラクルさま、コメントありがとうございます。本当にそうですね。2012年末の選挙は、さすがに無関心ではいられない、という人が多くなっているような気がします。
この記事のような形でも良いですし、他の形でも良いですし、様々な形で、投票率や政治参加への意識が向上するような取り組みが行われていくと良いなと思います。願いを込めて、また記事にさせていただこうと思います。
あとは、政治家が言っていることがどの程度本当なのかを見分ける技術が今一番欲しいですね。それを教えてくれる塾が希望です。
オラクルさま、コメントありがとうございます。なるほど!「思い入れ度」「具体性」「使えるリソース」など、色々な角度から測ることができそうですね。また今後の記事に書いてみたいと思います。
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