著者は、昨年のベストセラー「ゴマすりの極意」の著者丸山東太郎である。結論から言えば、今回の作品は、間違いなく前作を上回る良作である。
わかりやすく言うと、前作は下品、今回のは上品。前作のゴマすりの方法はあまりにあからさまで、頭の良い人間ならすぐにゴマすりであると看破してしまうので、逆効果となる場面も多々あった。
しかし、今回のは「お世辞」を、相手への愛情や、思いやり、あるいはリスペクトの表現としてのある種の芸術とも言えるものへと高めたと言える内容となっているのだ。
例えば著者は、頑張っておしゃれをしてきた女性に対して、男性の目から見て、仮にアイシャドウがパンダのようになっていたり、あるいはファンデーションが1ミリくらい厚塗りされているように見えたとしても、「どうしたの?」などとは決して言わず、「お、今日は一層かわいいね。」と、満面の笑みをたたえてしれっと言うべきだとする。また、女性が男性と一緒に食事をしたときに、仮に男性がボロボロの財布を取り出したとしても、「物を大事に使う人なんですね。」と褒めろという。
著者に言わせれば、それこそわざとらしいにも程があるくらいのお世辞ですら、相手への深い愛情や思いやりから出ているならばどんどん言うべきだとする。そしてそれがお世辞道である、と。
この作品のあとがきは、「お世辞の道は、険しく、遠い。しかし、我々がお世辞を極めたとき、間違いなく世界は変わる。お世辞は、愛である。お世辞を極める者は、愛の使者として幸福の絶頂を極めることができるであろう。」という言葉で締めくくられている。どこまでお世辞を追求するのか?と呆れるほどの著者の徹底ぶりには、最近の中途半端な論者によく見られる軽薄さは微塵も見られなかった。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
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