いじめっ子がウジ虫と呼ばれるように

 子供たちの学校生活では、新学期にも慣れてきた時期だろうが、今春はちょっと異変が生じている。全国各地の学校で、「いじめ」を「ウジする」と言い、またいじめっ子がウジ虫と呼ばれるようになっている。背景には、昨秋、「いじめ」を汚らしい言葉で言いかえるような提言が政府からなされ、子供たちの諮問会議で「いじめ」を「ゐじめ」と表記されるようになったことがあるようだ。

 「ゐ」はローマ字でWiに相当し、ワープロ入力でも「wi」と入力すると現れる。「うぃ」と発音することになる。すると「ゐじめ」は「うぃじめ」になる。それがなまって「うじめ」となり、さらに「ウジする」、「ウジ虫」と変化してきたようだ。当初の言い換え提言は政府主導のトップダウン的な意味合いがあったが、今回の「ウジする」、「ウジ虫」はそこから各地の子供たちが自然に変容させたボトムアップ的な表現だ。子供たちも含めた諮問委員会は、今回の言葉を歓迎する意向だという。

 これからは、いじめがカッコ悪く恥ずかしい行為だと、皆が意識する時代になるだろう。例えば大人になって居酒屋などで「俺も昔はいじめっ子でさあ、今では反省してるよ」などとしゃべると、喧嘩が強い番長のようでカッコイイかも知れないが、「俺も昔はウジ虫でさあ…」とは、ちょっと人前では言えなくなるだろう。また逆に、「俺は昔、いじめられっ子だった」だとジメっとしてカッコ悪いが、「俺は昔、ウジ虫の被害に遭った」だとそれほどカッコ悪くない。

 思えば、騒音で迷惑をかける暴走族がほぼ消滅したことにも、言葉の言い換えが寄与している。20世紀後半には日本中を席巻した暴走族であるが、20世紀末からネット上などで暴走族を珍走団と呼び変えることが提言され広まった。若者気質の変化もあるだろうが、珍走団との命名がカッコ悪さを引き立てたのは間違いない。今回の「ウジ虫」も同様に、命名の変化から状況を変化させることが出来るか、注目されている。

投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)

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