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防災用品のお世話サービスが好調

 災害の多い国、日本。常に備えていなければならないのは分かっているが、なかなか出来ないのが人というもの。また、各地の災害を見るにつけ、家族構成、避難場所、季節など様々な条件によって必要なものは異なり、防災用品を買いそろえるうちに一体何があれば安心なのか、分からなくなってしまった人も多いことだろう。

 富山県のキョクホク製薬では、7年前から「防災用品・非常食お世話サービス」を売り出した。好評のため現在は新規申込をストップしている。富山県発祥の「置き薬」方式から発案されたもので、各家庭に非常食などを置き、毎年巡回して古くなったものを回収し、新しいものに取り換えるサービス。4人家族3日分の水、食料、非常用トイレ、圧縮寝袋、カセットコンロ、ヘルメット等がセットになったものを初回5万円で購入。その後は使っても使わなくても1セットあたり2万円支払うことで、期限切れに近い食料や、中味の減ったカセットガス等を交換してもらえる。
 寝袋は子供用もあり、成長に合わせてサイズを大きくしてもらうこともできる。また、置き場所の相談にも応じてくれる。災害時に到底取り出せない高い棚にしまいこんでいる家庭も多いことから防災士の資格を全社員が取得し、指導できるようにした。

 キョクホク製薬がこの取り組みを始めたのは、昔ながらの「置き薬」を利用している地方在住の高齢者家庭で、非常時の備えが全くないことに営業担当が気付いたのがきっかけ。「おばあちゃん、お水の用意もないのは危ないよ、5年保存できるお水もあるよ」「でも5年先まで生きているか分からんし、でも気付いたら生きてて賞味期限は切れとるし、どないしたもんか」「じゃあ僕が毎年薬を見に来るときに水の期限も確認しますから」という会話が始まりだったという。防災用品を準備しているものの期限については無頓着だったり、管理が面倒だという家庭も多く、口コミで全国に広がった。置き薬を利用している各家庭を人が丁寧に巡回する、その強みを生かしたものとなった。「もともと薬の販売だけでなくご家庭の健康相談も受けていましたので、物と人のサービスをセットにするやり方に違和感はありませんでした」と営業のP部長は語った。

 個人の新規申込はいったんストップしたが、企業、集合住宅の申込は受け付けている。販売時からキョクホクのお世話サービスにビルごと、マンションごと加入しておくことで、それが付加価値となって売り上げにも貢献している。N不動産の石清水部長によると、「このマンション、キョクホクに入ってますか」と問い合わせてくる客も増えている。キョクホク製薬ではさらに年1度の防災訓練のお世話もセットで売り出し、お祭りのようなイベントにほぼ全戸が訓練に参加する効果も。

 昨年、富山県では全指定避難所でキョクホク製薬の「避難所パック」導入を決めた。家庭向けのサービスを行政向けに拡大したもので、食糧のみならず、粉ミルク、おむつ、生理用品、下着、暑さ寒さに対応できる服なども独自の圧縮技術を使い、最低限の置き場所で常備することが可能。「いくら個人で備えていても、家が潰れたらなにも取り出せない」という切実な声に「行政として真摯に考えた結果このサービスしかなかった」と防災災害課課長は語った。もちろん避難所が満員の場合に備え、テントも避難所パックに入っている。
 このサービスが早速役に立ったのが先月の富山県極地的豪雨。このとき避難したLさんに話を伺った。

「我が家の場合、裏に山があって地滑りの恐れもあるというので、雨が降り始める前から50キロ離れた避難所に行くことに決めました。自衛隊が車に乗せて連れて行ってくれた避難所では、キョクホクの腕章をつけた社員が迎えて下さり、段ボールベッドや、ドア付き仕切りのついた個室を用意してくれていたので驚きました。続々と避難してくる人たちの対応も見事で、まるでホテルのチェックインのようでした…、早めに避難する大切さを思い知りました。まさか、避難所スタッフの派遣まであるとは、キョクホクには恐れ入りました。プロの避難所運営というものを目の当たりにしたのは初めてです。自衛隊とキョクホクと、キョクホク導入を決めた行政に感謝したいです。税金を払いたくなりました」

 Lさんによれば三日三晩を避難所で過ごすことになったが何の不安もなかったという。簡易トイレは以前キョクホクの社員に使い方を教わっていたので小学生の息子も難なく使え、運動不足解消のために自転車をこいで発電することもでき、エコノミー症候群も避けられた。避難開始二日目には介護士資格のある社員が続々とヘリコプターで到着し、高齢者のケアも十分だった。
「帰ってみたら…、家は見事に潰れていました…。でも、家族全員無事でしたし、なにしろ避難生活で身体も心も弱っていなかったので、よし、また家を建てるぞ、とやる気がわきました。息子も避難所で年下の子供たちの面倒を見ていたせいか、成長したように感じられます」
 Lさんは笑顔で語ってくれた。一日も早い復興を祈る。

 なお回収した期限切れに近い非常食は「今現在発生した世界の災害現場に輸送するシステムが整っているのでそちらへ回しています。もちろん国内で災害が発生していれば現場に持ち込み、先に消費するようにしております」とのことである。「不謹慎ですが災害が多いので今のところ無駄になったものはありません」とP営業部長は小さな声で教えてくれた。

投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)

※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。

コメント

素晴らしい!
すぐに実現すると良いですね

こでまり (日付:

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