世の中で結構多く語られている言葉の嘘や不正確性を解き明かす、真実の書である。
著者は、タイトルに使われた「あなたのために」という言葉について、「『あなたのために』という言葉が本当に「あなた」のためであることはまことに少ない。本当に『あなたのために』と思っている人はわざわざそんなことを言う必要がないからだ。むしろわざわざそういうことを言うのは『自分のために』であることの後ろめたさを覆い隠す意図が背景にあると考える方が正確な理解であろう。」と述べて一刀両断にしているが、この調子が延々と様々な言葉について展開されていて痛快である。
上に挙げた「あなたのために」の他に面白かったのが、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉の前半部分についてである。
まずは「他人は変えられない」の部分についてだが、これについては「誰でも経験したことがあるはずなのが、誰かの言葉や行動によって自分が変わったことがあるということだ。これはその言葉を発したり、行動した主体から見れば『他人が変わった』ということだ。だから、『他人を変えられない』というのは非常に不正確な表現であり、あえて言うなら、『他人は変えられない場合がある』というのが正解である。」と説得力のある反論を加えている。
また、「過去は変えられない」の部分についても、「『過去』には『過去の事実』と『過去に対する評価』の二つの側面があり、前者は変えられないが後者は変えられるのに、この表現では後者までも変えられない印象を与える。従って、『過去の事実は変えられない』という正確な表現に改めるべきだ。」と主張している。
まさに「身も蓋もない」という言葉がふさわしいが、これまである意味盲目的に信じられてきた言葉の嘘や不正確さについての本書の解説を読むことで、我々が自らの精神に限界を作っている不要な観念を脳からそぎ落とすことができるのは確実だ。
投稿日: 1970/01/01 09:00:01 (JST)
※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。
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